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蚕影山

 上野原の境川沿いには、「先祖」とか「御霊」といった地名があります。信仰深き土地柄を想像させました。「蚕影山」という山の名は、国土地理院地図には載っていません。吉備人出版の「山梨東部の山 登山詳細図 1:16500」には載っていました。しかし「こかげやま」と読むことは最初知りませんでした。

 今回は、山の大ベテランにご一緒させてもらっての山歩きです。上岩下のバス停までタクシーで入りました。浄禅寺というお寺から蚕影山までの道、そしてさらに557mのピーク(稲荷山と言うようです)までの道は地図には載っていません。

 地図には載っていませんが、蚕影山までは、よく手入れがされた道です。地元の人たちが大切にしていることがわかります。

 山から帰ってから調べたのですが、蚕影山信仰というものが各地にあったようです。本山は茨城県のつくばのようですが、養蚕の盛んな地域で信仰されていたようです。


 蚕影山から557mの稲荷山へは、登山道はありません。落ち葉で隠れがちな仕事道が続いています。稲荷山の山頂には、表示は何もありません。目の前には、木の間越しに大きく生藤山が見えています。落ち葉がたくさん積もった明るい日差しの山頂で昼食にしました。のんびり歩いてきましたから、バス停からここまで1時間ほどかかっています。

 稲荷山からしばらく行くと左手から登山道が上がってきます。これは上岩から上がってくる道のようです。

 さらに登って行くと生藤山への尾根筋に出ました。至生藤山とされた壊れた表示板が立木にありました。

 我々は、反対側の倉子峠へ向かいました。しかし、ここで、道を間違えてしまいました。左へやや下って行く道は、すぐに行き止まりの様子になりました。右に行く道ははっきりとした登山道です。こちらを行きましたが、どんどん下ってしまいます。境川方面の集落へおりてしまうようです。引き返し、尾根筋を忠実に行くことにしました。すると道らしい様子が見えてきました。だんだん、道がはっきりすると、祠があり、さらに下ると、馬頭観音があって、倉子峠に降り立ちました。


 倉子峠は趣のある峠です。道沿いに芭蕉の句碑がありました。

「春なれや 名もなき山の 朝霞」

芭蕉がこの峠を訪れたかどうかはわかりませんが、芭蕉の弟子が甲州街道沿いに俳句を広めたようです。上野原や藤野周辺には句碑が他にもたくさんあるようです。

 

 ここからさらに447mの倉子山を越えて行く予定でしたが、急な登りくだりもありそうでしたし、バスの時間も考えて、このまま車道を沢井川方面へ下って行きました。橋詰という集落を通りましたが、急な斜面に家がありました。バス停からはかなり登ってくる場所ですが、買い物などどうしているのでしょうか。車を運転できる方がいれば大丈夫でしょうが、そうでなければ大変だろうと余計なお世話かもしれませんが、想像してしまいました。バス停は、鎌沢入口というバス停です。14:52の藤野駅行きがあと10分ほどで来るところでした。

 風がやや強く吹く日でしたが、日差しは暖かく、風のあたらない場所ではポカポカ陽気で楽しい山歩きができました。登山道のはっきりしないルートですが、地形を見て地図を見て、それでも間違い引き返したりしましたが、それも今日は面白さの一つでした。