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安曇野から大町

 100号の油絵「東沢の岩壁」を日野春アルプ美術館へ再び運ぶことが目的でしたが、もう一つ、目的がありました。江村眞一さんの個展が安曇野山岳美術館で行われており、27日が最終日でしたので、それに間に合うように出かけたのです。


 日本山岳画協会の作品展を今年の春に有楽町へ見に行きました。その時に、私が感銘を受けた作品が何点かありました。そのお一人が江村さんの作品でした。我が家の近くにお住まいであることがわかったので、先日の西荻窪での私の個展の案内状を出したところ、来てくださったのです。

 その時に、安曇野での個展があることを知り、最終日には在廊とのことでしたので、出かけました。お話を伺うこともできて良かったです。山登りも本格的にやっていらしたようで、マッターホルンの単独登攀もされ、冬山も70歳になるまで登られていたとのことでした。

 作品も現場で描くことが多いようで、描くのに良い場所も教えてもらいました。


 安曇野山岳美術館の後は、同じく安曇野にある「絵本美術館 森のおうち」へ立ち寄りました。宮沢賢治の童話の原画展ですが、作品数も多く、図書室も充実していて2時間近くいました。

 私は、竹内通雅さんの「月夜のでんしんばしら」の原画が良いと思いました。夜空の雲の描き方など夜の世界の表現が惹かれました。

 途中、日帰り温泉に立ち寄り、暗くなってから宿に予約したペンション「森のみち草」へ行きました。



 ペンション「森のみち草」は、2部屋だけのアットホームなペンションです。ネットで大町周辺の宿を探し、近くから山の景色がよく見られそうだったので選びました。

 残念ながら山は雲に覆われていましたが、晴れれば、宿のすぐそばから雄大な景色が見られそうな場所にあります。

 料理も美味しく、寒い日でしたが、薪ストーブが建物全体を温めていて快適に過ごすことができました。

 早朝に宿の周りを散歩しましたが、山は雲の中だったので、宿の前の景色を描きました。

 2日目の予定は、安曇野ちひろ美術館に行くことにしていました。その前に、宿のすぐ近くの国宝 仁科神明宮に立ち寄ることにしました。


 仁科神明宮は、伊勢神宮と同様20年に一度、遷宮を行います。今年は遷宮が行われたばかりとのことで、真新しい屋根を見ることができました。杉の大木もなかなか見事でした。神社のことは詳しくありませんが、興味深かったのは、たくさんの小さな社があって、山の神や、安産の神や火の神など様々な神様が祀られていることでした。

 2日目には、安曇野ちひろ美術館へ行くことにしていました。練馬の美術館は何度か行ったことがありますが、こちらは初めてです。かなり広い敷地です。

 ポーランド・フィンランドの絵本原画展を12月15日まで行っています。ここに展示してある、ユゼフ.ヴィルコンさんの作品が中々良いです。絵本「すきすきだいすき」は我が家にもあります。その原画もありました。私はそれよりも、彼のオブジェ作品に惹きつけられました。犬などの動物や鳥や魚を流木や廃材で作ってあるのです。ざっくりとした形なのですが、リアルな雰囲気が伝わって来ます。

 天井からぶら下がっている魚のオブジェもトゲトゲが無造作に棒を突き刺してあるような感じですが、生き生きとした迫力があります。

 先の方が顔になっていて手もあるアルペンホルンのような長い楽器は吹いてみたくなりました。


 昼食はペンション森のみち草で教えてもらった池田町の蕎麦屋「かたせ」に行きました。

新そばです。食べ終わってから出された蕎麦湯の寒天はほのかな蕎麦の香りがある上品なデザートでした。

 蕎麦屋のあとは、蕎麦屋で教えてもらった造り酒屋の「大雪渓」へ立ち寄りました。普段はワインとビールですが、これからの季節、日本酒を飲みたくなることもあるので、買って帰りました。

 後は帰るだけですが、家内が河原の小石を拾いたいと言うので、少し大町へ戻ったところから河原に降りました。ちょうど、有明山を右手に見て中房温泉への谷から奥が見えていました。大天井は雲の中なのでしょうが、標高が高くなるにつれ山肌が雪になっている様子がこれから冬を迎える景色になっていました。

 家内が小石や枯れた草や実を拾い集めている間に水彩でスケッチをしました。少々寒々とした景色になりましたが、本当に寒かったのです。

 あとはひたすら東京を目指して帰りました。