ディジュリドゥ を作る

 ディジュリドゥ はオーストラリア原住民アポリジニの楽器です。アリが中を食ったユーカリの木を使うと言われています。ただの円筒管なのですが、独特の演奏と音色が魅力です。

 循環呼吸という息継ぎで音を途切らせないで鼻で息を吸いながら吹き続ける奏法が独特です。

また、動物の鳴き声のような音色や低音の打楽器のような音色など変化に富んだ音も出せるのです。

 このディジュリドゥ をボイド管という建築資材で作りました。竹や塩ビ管で作る方法はネットで紹介されていますが、ボイド管を使って作る方法は2016年に私が自分で考えた方法です。

 比較的安価にできて、軽く、音色も良いです。しかし、作るにはいくつかのコツが必要ですので、ここで紹介することにしました。


 ボイド管というのは、建築資材です。コンクリートで壁を作る際、配管や配線のための穴を開けるために、コンクリートを流す前にセットしておくものです。様々なサイズがありますが、一番内径の小さな直径5㎝のものを使いました。通常は4m単位で売っています。1本500円ほどです。

 直径5㎝では歌口部分は太すぎます。これを直径3㎝ぐらいに縮める必要があります。

歌口方向にはV字にカットを入れ、先の方は広げるために切り込みを入れました。

 この段階で、内側にカシュー塗料を塗りました。カシューは漆と似ていますが、漆のようにかぶれることはなく乾燥も自然にできます。

 ボイド管は厚紙ですから、内側には何らかの塗装をしておく必要があるのです。

 昔から、竹の笛などは内側に漆が塗られています。漆は接着力が強く、乾くと滑らかなので、音にも影響するのだと思います。ただし、本物の漆は乾燥に一定の温度と湿度が必要なのです。また完全に乾燥するまでは触るとかぶれる可能性があるという厄介な面もあります。

 そこで、合成漆を使うことにしました。カシュー塗料は漆と分子構造が似ているのだそうです。しかしかぶれることはありません。独特の匂いがあり、それが抜けるまで日数が必要な面はあります。

 私は内径にはカシュー塗料を使い、外側はウレタン系の合成漆を使うことにしました。

 内側を塗るにはV字にカットした部分は刷毛が入りますが、その先は無理です。そこで、竹の棒に小さな刷毛をつけた道具を作りました。


 直径5㎝のボイド感を絞っていって歌口で大体直径3㎝ほどにする作業が一番時間と労力を要します。切り口にボンドを着けて、アルミ線やビニール紐で縛って縮めていくのです。かなり力が必要です。二人掛かりでやれば簡単かもしれません。

 先の方は、広げる必要があります。V字にカットしたV字部分をはめ込めば良いのですが、広がるようにビンを差し込んであります。


 円筒管を円錐管に変形することができたら、外側にテーピングテープを巻きます。他にも試しましたが、ニチバンの非伸縮50mm幅のテーピングテープが私は使いやすかったです。1本500円ほどします。これをまずは螺旋状に巻きます。それだけで作ったものもあるのですが、螺旋の模様が目立つので、後から作ったものは螺旋で巻いた後、縦にもテーピングテープを貼るようにしました。こうすると螺旋が目立たなくなります。


 最初の写真の右側はクリーム色の水性塗料を塗ったものです。黒はカシュー塗料。オレンジや茶色はウレタン系の合成漆です。

 後と写真の茶色のものは、濃い色のものは合成漆を何度も重ね塗りをしています。右側はクリーム色の水性塗料の上に合成漆を薄く重ね塗りしています。

 色々試行錯誤をしましたが、クリーム色の水性塗料で下地を作った後に、合成漆を少し薄めて塗り、乾いたらまた塗るという方法が美しく仕上がるようです。

 合成漆は、色々な色がありますが、「透(すき)」というものを主に使っています。

 アポリジニの絵はドットで描かれているものが多いです。ディジュリドゥもそうした模様が描かれているものがあります。ドットの模様には水源や動物など意味がある形があります。アポリジニの絵は地図のような意味合いのものもあります。仲間だけに伝える秘密の地図や文書の役割もあったのかもしれません。

 しかし、そうしたこととは別に装飾としても美しいので、あまり意味合いは深く考えず、ドットアートに挑戦しました。

 水や炎のイメージや太陽や月、ユーカリの葉などを描いてみました。

 アクリル絵の具を使い、最初は油絵の小筆で描きました。しかし、なかなか綺麗なドットが描けません。その後ステンシル用の丸筆の根元を糸で縛ったものを使いましたが、かなりの集中力を必要とします。

 アクリル絵の具はこすると剥がれてしまいますので、乾いたら上からクリアニスを塗ってあります。


 私の作ったディジュリドゥ は歌口の直径が2.5㎝〜3㎝です。このくらいならそのままで吹けます。本物のディジュリドゥ はもう少し太いです。それで、歌口の部分に蜜蝋で輪を作り、自分の口に合わせるようにするのです。蜜蝋はお湯やドライヤーの熱で柔らかくなります。それを指で丸めて棒状にし歌口へ取り付けるのです。

 「てのわ市」でディジュリドゥ を試し吹きしてくれた人の中で、もう少し歌口が大きい方が良いと言った人がいました。直径3.5㎝ほどで作っておいて蜜蝋で調整する方が良いのかもしれません。